大判例

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和歌山地方裁判所田辺支部 事件番号不詳

申請人

殿水慶太

右代理人弁護士

良原栄三

坂本康文

池内清一郎

被申請人

龍神タクシー株式会社

右代表者代表取締役

小川隆次

右代理人弁護士

村上有司

右復代理人弁護士

中松村夫

主文

一  本件仮処分申請を却下する。

二  申請費用は申請人の負担とする。

事実及び理由

第一申請

一  申請人と被申請人との間において、平成二年一月二一日以降、申請人が被申請人の従業員たる地位にあることを仮に定める。

二  被申請人は、申請人に対し、平成二年二月以降毎月二八日限り、月額一八万一九九七円の金員を仮に支払え。

第二事案の概要

本件は、被申請人(龍神タクシー)に雇用された申請人が、契約書に記載された一年の期間満了時にその更新を拒否されたため、その従業員たる地位の保全と賃金仮払の仮処分を求めている事案である。

一(争いのない事実)

1  龍神タクシーは、一般乗用旅客自動車運送事業、計量器修理事業、自動車修理事業を主業務とする会社である。

2  申請人は、平成元年一月二二日に、初めて龍神タクシーに臨時雇として雇用され、龍神タクシーのタクシー運転手として稼働してきた。

3  申請人は、右雇用に際して契約書に署名したが、この契約書には、契約期間を平成元年一月二二日から平成二年一月二〇日までとする記載がある。

4  龍神タクシーは、右契約満了日である平成二年一月二〇日、申請人に対し、解雇予告手当を支払うことにより、同日付をもって雇止め(解雇)する旨の意思表示をなした。

二 (争点)

1  本件雇用契約の性質。

2  本件雇止めの効力。

3  保全の必要性。

第三争点に対する判断

一  本件雇用契約の性質。

1  証拠(申請人、被申請人代表者、甲四)によれば、次の事実が疎明される。

(1)  龍神タクシーのタクシー運転手は現在六九名であり、そのうち五六名が本雇(正職員)で、申請人を含む一三名が臨時雇(臨時職員)である。

(2)  龍神タクシーでは、昭和五三年までは本雇の運転手のみであったが、昭和五四年から、乗客の需要に即応できるように、本雇の運転手で結成している龍神タクシー労働組合(私鉄総連加盟)の同意の下に臨時雇制度を導入し、以後臨時雇の運転手数は逐次増加して現在(一三名)に至っている。

(3)  昭和五四年以降は、本雇の運転手の定員が不足した場合には臨時雇運転手の中からこれを補充してきているが、臨時雇運転手の全員が本雇を希望するわけでもなく、賃金体系は本雇に比べて不利になっているものの、勤務時間に拘束されることなどを嫌って、臨時雇のままでの雇用を希望している者もいる。

(4)  臨時雇運転手については、契約上は一年と定められているが、自己都合退職者を除いて例外なく更新されてきているうえ、更新の際に新たな契約書が取り交わされることになってはいるものの、保証人の記載や誓約書が必要とされていることなどから、契約の更新が後日にずれ込むこともあったが、新たな契約書を提出させることなく雇用を更新した事例はない。

(5)  このような事情にあるにもかかわらず、龍神タクシーは、申請人の雇用継続を拒否した。

(6)  なお、申請人を含む龍神タクシーの臨時雇運転手ら七名は、平成元年一一月二二日、全日本運輸一般労働組合田辺支部龍神タクシー分会を結成した。

2  右事実及び前示争いのない事実によれば、申請人は、龍神タクシーに、期間を一年として雇用されたことは明らかであって、他の臨時雇の運転手の雇用契約が例外なく更新されてきているからといって、申請人の本件契約が期間の定めのないものであるといえないことは当然のことである。

よって、本件雇用契約は、一年の期間の定めのあるものということになる。

二 本件雇止めの効力。

1  前示したように、他の臨時雇の運転手の場合、期間満了の都度新契約を締結していたものであって、その中には、期間の満了と契約の更新との間に時間的なずれが見受けられる事例はあるものの、これが常態であったとまではいえないから、本件雇用契約においても、一年の期間満了とともに当然に雇用関係が消滅したというべきである。

2  そのうえ、本件にあっては、龍神タクシーにおいて、申請人に対し雇止めの意思表示までしているのであるから、いずれにしろ、本件雇用関係は期間満了により消滅したものといわざるをえない。

3  もっとも、期間の定めのある契約であっても、就労の期間、更新の回数や形態等によっては、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態にあったと評価されて、解雇に関する法理が雇止めに類推適用される場合がありうるけれども、本件にあっては、申請人の就労の期間は一年にすぎず、過去に更新が一度もなされていないのであるから、解雇に関する法理を類推適用する余地はない。

4  ただ、解雇に関する法理の類推適用がない場合であっても、雇止めが不当労働行為を構成したり、新契約を締結しないという不作為が権利の濫用に当たるとされる場合がないわけではないが、その場合であっても、損害賠償等の請求をなしうることは格別、申請人と龍神タクシーとの間に新たな雇用契約が締結されたことになるわけではないから、本件のような地位保全、賃金仮払の仮処分申請においては、この点に関する申請人の主張は意味のない主張といわざるをえず、判断の限りでない。

三 従って、本件申請は、保全の必要性について判断するまでもなく理由がない。

(裁判官 寺田幸雄)

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